自然保護講演会「山の自然保護を考える〜トイレ問題との関わりで〜」報告


講演会

   日時   2017年10月25日(火)18時30分〜20時25分
   会場   立川市女性総合センター5階 第3学習室
   講師   NPO法人 日本トイレ研究所理事 上 幸雄 氏
   主催   自然保護委員会
   参加者
    一般 小野昭夫 1名  会員:石井秀典、石塚嘉一、石川さとみ、石原和子、市川俊彦、
    植草由利、岡義雄、岡田陽子、小河今朝美、小野勝昭、笠原功、笠松幸衛、神崎忠男、
    北原周子、城所邦夫、解良知子、佐久間マサエ、竹中彰、富澤克禮、中村正之、西村智磨子、
    西谷隆亘、野口正江、廣田博、松川信子、松川征夫、宮崎紘一、吉田敬、河野悠二 29名
    計30名

 第5回目の自然保護講演会は、演題「山の自然保護を考える〜トイレ問題との関わりで〜」で開催された。一般公募にも係らず、応募参加者は3名で、当日の参加者は1名となった。我々登山者にとっては山でのトイレ問題と自然保護は切実な問題だが、一般の人に感心を持っていただくのが難しいことを改めて感じた。 講師は、仕事でアラスカ、ミシガンで漁業に従事し、五大湖で環境汚染知り、帰国後、公害・環境、自然保護関係の編集、調査の仕事に携わり、1985年に日本トイレ協会を設立し公衆トイレの改善に取組み、その後、山のトイレ、学校のトイレ、駅のトイレ、途上国のトイレと展開された活動を行ってきた。今回は、その活動の中で、山のトイレを主体に講演をされました。
 講演に先立ち、講師のご尽力とご厚意により参加者に無料で携帯トイレが配布された。 講演は、まず基本認識として「人は、山でも排泄する動物である」あることから、人はどこでも「トイレ」と「し尿処理」を必要とする宿命で、だから山の自然のなかでトイレと後始末をどうするか、では設備や方法はどうするか、山の自然は神々、ではどう対応し、感謝するか、あなた自身は、山での行動は個人や組織でどうするか、から始まった。まずはじめに、アジアの山の現状としてインドネシアのリンジャニ山、ベトナムのファンシーパン山を紹介された。リンジャニ山は、登山道の両脇はペットボトル、ビニール袋、空き缶・ビンなどのゴミが散乱し、宿泊のキャンプ地のトイレはテントが囲った、穴を掘っただけで満杯になると、また周辺に穴を掘るトイレが完成する。この様にゴミとトイレが最悪の状況であった。ファンシーパン山も同様に、散乱ゴミのひどさとトイレの不備に尽きる。それは、20年前の富士山の光景にそっくりであった。富士山の世界文化遺産登録に向け、登山道沿いの散乱ゴミや、特に山小屋のトイレ問題は深刻であった。トイレに溜まったその年のし尿は一般登山シーズンの終わる8月末から9月初めに便槽の蓋を開けて放流していた。この問題が解決されたのは、2004年に静岡県側が、2006年に山梨県側の山小屋にそれぞれ管理型のトイレ整備ができ、トイレからのたれ流しがなくなってからのことであった。 この様に、山のトイレ問題とは、日本でトイレ改善が始まったのは25年前で(かって、富士山も同じだった)、山からの恵みと山への怖れが、山への憧れ、山の敬い、感謝する心を育み、自然のなかの人間は、金魚鉢の金魚と同じ、閉じられた世界 であることを認識することから始まる。また、山の自然と人間は、豊かな山の恵み、自然災害などに対する畏敬、人為災害による自然破壊が前提となっている。その中でトイレ問題の発生は、施設整備、技術開発の遅れ、不十分なし尿処理・予算不足、情報伝達、広報・啓発活動が不十分、環境教育の遅れ、受益者負担の不徹底があった。
 トイレ対策の現状は、山小屋の対応策として洋式化、バイオトイレ導入、外国語表記、国(環境省など)の対策としては、環境技術実証事業、補助制度、有料化、地方公共団体の対策としては、観光拠点整備、トイレ再整備事業、山岳団体、個人の対策としては、有料化・入山料への協力、トイレ情報の発信などがある。 山のトイレ問題の経緯は、南ア北岳・大樺沢での大腸菌検出騒ぎ、国際トイレシンポジウム(富山県)で山のトイレ問題取上げ、第1回山岳トイレシンポジウムの開催、「山のトイレさわやか運動」が発足・活動開始(山小屋トイレアンケート、協力金、携帯トイレ)、地方自治体(静岡県、富山県、長野県など)からの補助制度、環境省の環境技術実証(モデル)事業の開始、山岳団体・マスコミ等での山岳シンポジウムの開催、バイオトイレ・携帯トイレの開発・改善であった。ゴミ問題とトイレ問題は隣同志であり、それには人の行動と適正利用が大事になる。オーバーユースの問題、ピーク対応と施設整備の考え方、平日利用による平準化とトイレ、山域の自然度による施設整備の考え方を整理する必要がある。このことは、人と自然と神が関係しており、山のトイレ改善でルール・マナーを向上させ、山の万物は「神」であり、神への冒涜は許されなく、神への感謝が山岳信仰・山岳崇拝へと繋がっていく。ここで、山岳信仰・山岳崇拝の事例が紹介された。山岳トイレの技術開発としては、自然環境が厳しい、インフラ整備が不十分、利用条件(季節、曜日変動)が厳しい、メンテナンス(管理や修理)が困難などを配慮した山岳トイレのタイプは、バイオトイレ、土壌処理型トイレ、燃焼式トイレ、常流循環式トイレ、携帯トイレなどが開発された。携帯トイレの山での可能性は、山には何も残さないとする、入山者の自己処理責任と行動責任を具体化でき、山の自然保護と自然資源の適正管理を実現できる。一方、課題としては、普及に向けた広報・PR、販売方法の確立や、使用後の収納・運搬、複数日での入山管理対応など、普及から処理までのシステム作りが必要となる。 山のトイレのまとめとして、山のトイレ改善に向けては、し尿最終処分、維持管理、適正な維持管理を考慮したトイレタイプ、適切なトイレ使用を目指した利用者への提供、トイレの設置条件を管理する順に整備を進めると良い と結ばれた。最後に、講師の提案として、日本山岳会科学委員会として、山岳トイレの現状と課題を科学的に調査分析し、今後のトイレ整備や維持管理に対応できる除法を提供することで、山の自然保護と適正利用に貢献する。 があった。 講演の途中でポケットティッシュとトイレペーパーの水分吸収の違い実験および携帯トイレの水分吸収状況と実際の携帯トイレの実演を飛び入り助手を活用して行われた。 改めて山のトイレを考えさせられる講演であった。
(文/河野悠二  写真/廣田博)

参加者
一般 小野昭夫 1名  会員:石井秀典、石塚嘉一、石川さとみ、石原和子、市川俊彦、植草由利、岡義雄、岡田陽子、小河今朝美、小野勝昭、笠原功、笠松幸衛、神崎忠男、北原周子、城所邦夫、解良知子、佐久間マサエ、竹中彰、富澤克禮、中村正之、西村智磨子、西谷隆亘、野口正江、廣田博、松川信子、松川征夫、宮崎紘一、吉田敬、河野悠二 29名、計30名